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2015年1月 9日 (金)

《ペレアスとメリザンド》その1

前回につづきここでは《ペレアス・・・》について。



●随想《ペレアスとメリザンド》演奏会形式


先月7日、友人が仕事の関係で行かれなくなったということで譲り受けたチケット(正確にはチケット引換券=葉書)を手に、久し振りにNHKホールに出掛けました。

このNHKホールでのオペラ体験は1993年のキーロフ(現 マリインスキー)オペラ来日公演でのタルコフスキー演出による《ボリス・ゴドノフ》以来なので、なんと! 21年ぶり(「久し振り」なんてどころじゃない)...。と言っても、今回のオペラは演奏会形式でしたが、私は「下手な舞台よりも演奏会形式!」と常日頃から思っていましたし、しかも今回マエストロ・デュトワ曰く、このオペラは「むしろ演奏会形式がふさわしい」(プログラムに掲載)というだけあって ―かどうかは別としても、確かに作品の本質がくっきりと明瞭に伝わる上演であったことには違いありません。

こうしたオペラが誕生し得たことは人類史上の奇蹟ではないだろうか? と思えるほど、この作品は美しい。そしてその美しさは「死」によって輝いている。こう言うとデカダンスと思われるかも知れませんが私はそうは思わない、ドビュッシーは全てを見通す心眼を具えた醒めた芸術家でした。或いはボードレールの「万物照応」を体現した作曲家と言えるでしょうか。

「自然」はひとつの宮殿、そこに生ある柱、
    時おり、捉えにくい言葉をかたり、
    行く人は踏み分ける象徴の森、
    森の親しげな眼差しに送られながら。

    夜のように光明のように涯(はてし)もない
  幽明の深い合一のうちに
  長いこだまの遠くから溶け合うように、
    匂と色と響きとは、かたみに歌い。

    この匂たち、少年の肌に似て爽かに、
    牧笛のように涼しく、牧場のように緑に、
    ―その他に、腐敗した、豊かな、勝ちほこる

    匂にも、無限のものの静かなひろがり、
    龍涎(りゅうぜん)、麝香(じゃこう)、沈(じん)、薫香(くんこう)にくゆり、
    精神と感覚との熱狂をかなでる。

  ~ボードレール「万物照応」(福永武彦訳)


いろいろ述べる前に、このコンサートのことメモっておきます。
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N響第1796回定期公演
日時▶2014年12月7日(日) 15時開演(開場は14時)
会場▶NHKホール

指揮:シャルル・デュトワ

ペレアス:ステファーヌ・デグー(バリトン)
メリザンド:カレン・ヴルチ(ソプラノ)
ゴロー:ヴァンサン・ル・テクシエ(バスバリトン)
アルケル:フランツ・ヨーゼフ・ゼーリヒ(バス)
ジュヌヴィエーヴ:ナタリー・シュトゥッツマン(コントラルト)
イニョルド:カトゥーナ・ガデリア(ソプラノ)
医師:デーヴィッド・ウィルソン・ジョンソン(バリトン)
羊飼い:浅井隆仁(バリトン)

合唱:東京音楽大学(合唱指揮/阿部純)
コンサートマスター:篠崎史紀

メリザンド役のヴルチさんは私の席からはお顔まで鮮明に見える距離ではなかったのですが、聴いての全体的印象では儚げなメリザンド役にぴったりの好演でした。他の方々もオーケストラも素晴らしく、特に指揮のデュトワ氏の音楽の運びや色彩感はドビュッシー芸術の神髄を伝えるに充分であったと思います。

つづく


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