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2013年5月29日 (水)

「嗚呼、おまえに会えてなんて嬉しいのだろう、庭よ!」〜《子どもと魔法》【限定公開MP3TUBE追加】

既掲載記事1, 2に引続き《子どもと魔法》の内容をもう少しご紹介したいと思います。ここに掲げることのできるのは要するに「台本」なのですが、これは私が子供の時のデュランのボーカル・スコアへの鉛筆による「書込み」に基づくものなのです(1 参照)

樹、花、ひどく小さい緑色の池、木蔦の巻きついた太い樹がそこにある。昆虫、雨蛙、蟇蛙の音楽、梟の笑い声、そよ風と夜鶯の囁きが聴こえる。

子ども:あー、おまえに会えて何て嬉しいのだろう、庭よ!
(悲痛に)ああー!
子ども:どうしたんだい?
樹:私の傷だ! 私の傷だ!
子ども:何の傷だい?
樹:昨日おまえがナイフでつけた傷だ
  あー! まだ血が出ている
他のたくさんの樹々(唸り、揺れながら)私たちの傷だ! 私たちの傷だ!
  まだ新しい、そしてまだ血が出ている
  おー、いたずらっ子め!

子どもは気の毒になって大きな木の皮に頬ずりする。一匹の蜻蛉が羽音をたてて通りすぎて見えなくなる。そして飛びもどり、また通り過ぎる。他の蜻蛉がそれに続く。一匹の夾竹桃色の雀蛾も同じように飛んでくる。他の雀蛾たちも他の蜻蛉たちも....。
蜻蛉は飛びながら歌う。


蜻蛉:おまえはどこだ?
   わたしはおまえを探している...
   捕虫網が...
   彼がおまえを捕えたんだ...
   おー、おまえよ!
   細長くか弱い親しいおまえよ!
   おまえのトルコ玉、トパーズ
   おまえを愛する空はわたしほど悲しみはしない...

   ただひとりで、ただひとりで、
   わたしは悩む...
   わたしはおまえを探す...
   あいつを返してくれ!
   彼女はどこだ?
   わたしの仲間を、
   彼女を返してくれ!
   返せ! 返せ!
   わたしの恋人を返せ!

子ども:それはできない! それはできない!
蜻蛉(しつっこく)彼女はどこだ?
子ども:それはできない...
  (横を向いて)ぼくがつかまえた蜻蛉は針に刺して壁に留めてある... ああ!(こわがって)

蝙蝠のロンド(空から別の声)
蝙蝠:
彼女を返せ! Tsk, tsk... 返してくれ! Tsk...
   わたしの恋人... 蝙蝠よ...
   おまえは知っているだろう?
子ども(頭を垂れて):知ってる!
蝙蝠(飛びながら)大きな棒が... Tsk, tsk... 彼女を追っかけた...
          昨日の夕方... Tsk...
          おまえが勝った... そして小さい彼女は死んだ...
          おまえの足もとで...
子ども:ゆるして!
蝙蝠:巣いっぱいに... 小さい小虫... 母親を亡くした。
   その子たちを養ってやらなくちゃならない...
子ども:おかあさんがいないんだ...
蝙蝠:だからおれたちは Tsk, tsk... おれたちは飛んでいくんだ... 餌を探すんだ... はぐるぐる飛び廻るんだ! おれたちは飛んでいる餌をパクリとくわえ採るんだ。それはみんなおまえが悪いからだ!

下では小さい雨蛙が小さい池のふちに両手をかけてはい上る。もう一匹も同じように...そして続いてもう一匹もと。そして、池のふちは押し合いながらケロケロ鳴く雨蛙たちで囲まれる。

彼らはふちから離れ、雨蛙流に戯れ始める。

……雨蛙のダンス……

彼らのうちの一匹が子栗鼠に手をかける。


栗鼠(無愛想に、蛙に)逃げろよ、バカ! 籠は? 籠は?
雨蛙:ケケケケセクサ?
栗鼠(低い二本の枝の股で栗鼠流に咳をしながら)牢屋だ。ええと、ええと...   牢屋だ。 二つの格子の間にわたしたちを刺す鉄棒がある。
   ええと、ええと...
   ぼくは逃げることができた。でもおまえの湿った四本の手足のようにはいかない。
雨蛙:おまえはななななんと言うのだ?
   わたしは「籠」なんてもんは知らんよ。
   でも人間が投げてくれる蠅なら知ってるよ。ピョコン!(飛び上がる)
それから赤い紙屑なら、ピョコン!
   餌がやってくる、わたしは飛びかかる、人間がわたしをつかまえる、わたしは逃げる、わたしはまたやって来る、ピョコン!
栗鼠:脳味噌なしめ! 呪ってやりたいな!
子ども(栗鼠に)あの籠はきみの素早い運動や四つの小さな手足や美しい目をよく見るためだったんだ...
栗鼠(皮肉に)まったくだ! それはおれの美しい目のためだ!

彼が話している間に庭は栗鼠がだんだんと増えてくる。樹の上での彼らの愛撫は地上の雨蛙の戯れや愛撫を妨げない。

栗鼠:
おれのその美しい目に何が映ったかおまえは知ってるかい?

一対の夾竹桃色の雀蛾も彼らと同様に戯れる。他の群れもくっつき合ったり離れたりする。

栗鼠:自由な空、自由な風、鳥のようにちゃんと翔べるおれの自由な兄弟だ...
 だが、本当に映ったものを見てみろ! おれの美しい目には...
   涙がいっぱいだったんだ!

庭は虫の翅音が響き、栗鼠たちの目がキラキラして、動物たちの愛情と歓びとの楽園となる。

子ども:彼らは愛し合っている。彼らは幸福なんだ。彼らはぼくのことなんか忘れてしまった。

白い牝猫と黒い牡猫が壁の天辺に現れる。牝猫は愛情を以て牡猫の耳を嘗めて弄ぶ。彼らは追いかけ合って一匹ずつ壁の狭い天辺を歩いて遠ざかる。

子ども:彼らは愛し合っている。ぼくのことなんか忘れちゃった。
    ぼく、ひとりぼっちだ...
    (彼は我知らずに叫ぶ)ママ!


このオーディオファイルは限定公開です
この部分の楽譜PDFはこちら(2016年3月20日まで公開)です
【訂正】21日まで(1日延長します)

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