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2012年6月

2012年6月10日 (日)

〈三つの影像〉について ♪箏合奏団絹の会 第32回演奏会 19日(火)

来週の火曜日(19日)に箏合奏団絹の会の演奏会があります。詳しくはこぼれおちる月にアップしてありますのでご参照ください。

今回は、1999年に三重県の現代邦楽グループ真珠(あらたま)の委嘱により作曲した〈三つの影像〉第一集が再演されます。この作品は絹の会の皆さんによって取上げられた最初の作品で、この後、宮澤賢治の童話を題材とした第二集と、作曲者の夢を題材とした第三集が、絹の会の委嘱によって作曲され発表されました。つまり〈三つの影像〉はシリーズとして全三集九曲あるのです。第二第三は二面の箏と十七絃の三奏者のためのものですが、この第一集のみ、それに尺八を加えた四奏者のための作品です。

以下に、〈三つの影像〉の全貌を記します。

〈三つの影像〉第一集 [尺八,2箏,十七] 現代邦楽グループ真珠 委嘱
  一、海の子供
  二、uekap(ウエカ または ウエカブ)
  三、踊り

〈三つの影像〉第二集 〜宮澤賢治の童話による〜 [2箏,十七] 箏合奏団絹の会  委嘱
  一、双子の星
  二、銀河鉄道の夜
  三、星めぐりの歌

〈三つの影像〉第三集 〜箏夢〜 [2箏,十七] 箏合奏団絹の会  委嘱
  一、繭の中で
  二、綾取
  三、海の夢

第一集は作曲者の私的思いでに基づく作品で、第一曲“海の子供”は幼い時に父の会社の同僚の方のその時の私と同年くらいの女の子と海で遊んだ時の思いでと、中学生になった時に、その女の子が、夏に花火で遊んでいたら着物に引火してしまい、それが元で亡くなられてしまったという話を父から聞いた時のショックから着想された作品。後に作家で詩人の寮美千子さんにイメージにぴったりの素敵な詩を付けて頂いて歌曲にもなり、また、お馴染のBouquet des Tonsのファーストアルバム〈Anthologie〉にもBouquet des Tonsの編成(Fl,Vn,Pno)のための編曲のヴァージョンが収められています。
第二曲“uekap”は、1997年に親しいボランティアの方々とテラノホールで「アイヌジョイント展」を開催した折の 故 杉村満エカシとフサフチ(ご夫妻)との交流の思いでに拠る作品。その時同時併催の「上川アイヌコタン写真展」の写真をお持ちでいらした畑野さんのお父さん=昔、旭川のアイヌコタンの方々とと親交のあった故 松実政勝氏撮影による写真の中の美しい姉妹=杉村京子さんとフサさんのuekapと、フサさんより直接伺ったお話の思いでです。
第三曲“踊り”は、青春時代の心象風景のようなもので、Memento Mori という言葉に象徴されるような「生」の束の間の体現としての「踊り」です。

第二集は宮澤賢治の先立たれた妹トシに関連した童話に基づく作品ですが、賢治が、当時話題になっていた相対性理論や量子力学を拠所に、死者の世界とのコンタクトを本気で考えていたという寮美千子さんの論考からもヒントを得て、発想されています。

そして第三集は作曲者の実際に見た夢を題材に、さらなる意識(心)の深層への旅を試みました。

今回、絹の会の皆さんによって再演される第一集は、以上のように、「若書き」の作で、本当はもっともっと若い時に書かれて然るべき作品であった、と言えそうです。


絹の会の皆さんは、その名の「絹」をイメージさせる独特な柔らかさしなやかさを持った音色で、ジャンルを超えた親しみやすい箏アンサンブルの音楽を探求され、続々とCDもリリースされています。検索→Amazon

今回は、東日本大震災復興支援コンサートで、前半に上野哲生氏の〈三つの舞〉、飯島俊成氏の〈琉球の風〉、私の〈三つの影像〉、そして後半に菊田郁氏の追悼詩集『沈黙の海』の朗読と伴に、島津秀雄氏編曲による〈祈り〉が演奏されます。
会場はいつもの日本橋劇場。開演は19(午後7)時。全自由席3千円。
こぼれおちる月

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2012年6月 9日 (土)

私のウェブサイトの今後

311以降、危機感と問題意識から、この「風の耳」も原発震災に関する記事ばかりが増えてしまいました。「風の耳」は本来、作曲家高橋喜治に関するニュースを主体として、その他に、演奏会やその他、主に芸術に関する記事を書いて行こうと始めたブログです。既にお知らせしましたように(既掲載記事参照)、「風の耳」は本来の主旨に戻し、原発問題などの芸術以外のことに関しては、別に設けました Reflets dans l'eau に引続き書いていくことにしました。

以下に今後の私のウェブサイト全般を纏めて、その方針の簡単な説明を添えます。

HARUAN:総合オフィシャルサイト。
 ・音楽工房Amakane:高橋喜治作品の販売楽譜、試聴のページがあります。
 ・葦笛舎:Bouquet des Tons 関連サイト。Bouquet des Tons のレパートリーの高橋喜治作曲・編曲作品の販売楽譜、試聴のページがあります。

作曲家 高橋喜治 の ホームページ:高橋喜治の総合サイト。昨年の11月末より更新が途絶えていますが、準備でき次第再開。

風の耳:高橋喜治に関するニュースその他のブログ。
 ★:高橋喜治の作品に関連した覚書などのブログ。
 ★こぼれおちる月:演奏会その他のイヴェント案内・記録のブログ。

Reflets dans l'eau:原発問題など、芸術以外の気になる事をメモするブログ。(Harouenのハンドルネームで更新。)

Amakane Ch.:Harouenのハンドルネームで開設したYouTubeのページ。今のところオリジナル動画は未投稿ですが、再生リストに音楽関連の他に私の芸術意識や好みとは関係なく問題意識から収集した動画を纏めてあります。震災以降「風の耳」で取上げた映像なども項目別に纏めてあります。

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“Syzygy” 

昨日、大坂寛写真展「Syzygy」(既掲載記事参照)に出かけた。

地下鉄広尾駅から4番出口を出て、外苑西通りの信号を渡り、JICA地球ひろば(右)と広尾ガーデンヒルズ(左)に挟まれた欅並木路(緩やかな坂)Keyakinamikimichi を暫く行き(その間右手に広尾東公園あり)突当りのT字路を左に折れ、左手の広尾北公園(右手の道路向に高陵中学校あり)を過ぎたところで右手道路向に渡ってT字路(右角に美容院)を行くと閑静な高級住宅街。インテリアショップをちょっと過ぎたところで、左折するとすぐ右手に会場のギャラリーEM西麻布があった。
Door ドアの前にはこの家の忠犬と思われるワンちゃんが長々と寝ていて、失礼ながら尻尾を跨いで入らなければならなかった(おとなしいお行儀の良いワンちゃんでホッとした...)。

ギャラリー内はどなたもいらっしゃらず静まりかえっていた。記帳を済まして(流石にギャラリー内でのカメラは控えたが...)30点ほどの作品に次々と引寄せられていった。

途中、奥の方でガサゴソと物音がしたかと思うと、ギャラリーのご主人が現れて(なんだー、いらっしゃった...)ご挨拶を交わした。
私が 案内にもあった作品に見入っていると、それは今回のためのニュープリントであることをおしえてくださった。

ギャラリー内には、旧新カメラと共に大坂氏お手製の作品集〈Syzygy〉が置いてあったが、残念ながら高額のため手が出なかった。アイスティをご馳走になり、気に入ったポストカード3点を購入し、挨拶をしてギャラリーを出た。Entrance 作品は想像以上に神秘的で、ドラマティックな要素も感じた。ある作品は、まるでギリシャ悲劇のワンシーンのようだった。

実のところ私は同名の作品の作曲を始めていた。
胸の奥深くに突き刺さった棘の傷が、けっして膿むことなく、奇跡的に、程好く発酵していくように、それは新しい生命へと育ちゆくようだ...。

大坂寛 写真展「Syzygy」は今日18時まで上記ギャラリーEM西麻布にて開催中。

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2012年6月 3日 (日)

大坂寛 写真展「Syzygy」 9日(土)まで

Syzygy2012_2 ←(C)Hiroshi Osaka / Syzygy #32 1984(下記リンク先より拝借)

嘗て、イタリア在住のテノール歌手ダルタニャン・ホニオ氏の来日公演に編曲で関わらせて頂いたことがあったのですが、その時のとても印象的なチラシの写真を撮られた方が、国際的フォトグラファーである大坂寛さんで、私には奇遇だったのですが、以前、大坂さんから何点もの樹々の写真を撮影時のエピソードと伴に見せて頂けた言葉に尽せぬ忘れられない幸運な体験があり、今回の写真展も、出かける前から、特別な想いを、私は抱いているのです。
その時の樹々の写真は、それ自体で美しく、心に残るものなのですが、決してそれが完成作品ではないのでした。大坂さんは、そこから更に独自の手法を凝らして(素人の私には未知の様々な加工を施して)作品に仕上げていく訳なのですが、そうしてでき上がった作品は、鑑賞後、けっして「写真を観た」という感じはしなくて、絵画や音楽などの芸術作品を鑑賞したのと全く変わらない濃密な余韻に浸っている自分をそこに見出すのです。

51r3pendoil_sl500_aa300_ 今回の企画とは別の話ですが、花を題材とした〈ボタニック・ハート〉に描かれた花は、最早観賞される「花」なのではなく、そこに生きて、呼吸し、鼓動までもが聴こえてくるような、薫り立ついきものとしての花だ。そのいのちの企みまでもが、胸の奥に棘のように刺さり、観る者を捕えつつ、傷つけもする..... そんな花でした。

今回の写真展のタイトルになっている〈Syzygy〉とは、氏が1985年に日本写真家協会新人賞を受賞されたヌードシリーズのタイトル。
以下、解題その他を案内状より引用します。

天文学の日食、月食など一つに重なるの意味をなし、背中同士張り付く三種類の人間が切り離され、対になる片割れの分身を探し求め合うというギリシャ神話から、似ているものとしか心通い合えぬという心理学的な意味合いも含まれる。僕の若い時代のその時々に惑いながら、己の根底にある可能性をこのモデルを対に想い探り綴った作品です。 今回、当時の印画紙で焼いたヴィンテージとニュープリントも含め展示いたします。

引用、以上。

今月9日まで開催中(日・月は休館)。12時から18時まで。
会場は、ギャラリー イーエム西麻布
     106-0031東京都港区西麻布4-17-10
     Tel 03-3407-5075  Fax 03-3407-5180
     http://www.takeuchi-studio.jp/gallery_em

大坂寛 写真展「Syzygy」|Gallery EM nishiazabu |IMA ONLINE

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2012年6月 2日 (土)

シャガール ー愛をめぐる追想ー 〜魂を解放する美術界のモーゼ〜

展覧会『シャガール ー愛をめぐる追想ー』は、NHKサービスセンターの主催により、今年3月から、大阪 京都 横浜 と巡回し、今月日本橋でフィナーレを迎える。会場は、それぞれの地の高島屋のギャラリーだ。(詳しくは→こちら

先日、買物に出かけてたまたま開催を思い出して急いで会場に潜り込んだ感じだったが、ラッキーだった。未公開作品がかなりあった。

Chagall シャガールは、私の好きな画家の一人である。
愛らしいロバ、雄鳥、雄鳥人間(雄鳥と人間が合体した姿。シャガール自身か...)、ヴァイオリン人間(楽器のヴァイオリンと奏者の人間が合体している。左肩から先が楽器になっていて、それを右手の弓で弾いている...)、魚(キリストの象徴)、妻ベラ、空中に浮かぶカップル、ブーケ、そしてサーカス等々、親しいモチーフに溢れ、一々、微笑みと伴に頷きながら観入ってしまう、一貫して、そんな、喜びを感じさせてくれる作品群だ。

今回改めて知ったことは、シャガールのファーストネーム Marc(マルク) が、Moses(モーゼ)に由来していたこと。シャガールの生家は敬虔なユダヤ教徒の土地柄で、彼の絵に決まって出てくるロバや鶏たちや人や家々も自身の幼少年期に親しいモチーフだったのだ。
彼はラヴェルのバレエ〈ダフニスとクロエ〉の美術も担当し※後註1参照、その画集も出版されていて※後註2参照、その普及版は私の宝物のひとつ。ギリシャ神話的題材にも関わらず、ここでさえシャガールはいつものシャガールなのだ。
長い芸術家人生で、これほど一貫した作風を持続したことは、変貌に変貌を重ねていったピカソや作曲家のストラヴィンスキーなどとは大違いだ。

独特な色彩や暖さは故郷ヴィテブスクへのノスタルジーとベラへの愛から生まれたのか? 惑星ソラリスの海に、そしてイタリアの廃虚の中に故郷を現出させたタルコフスキーを、その一貫した波動からなんとなく連想した私だった。

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※後註1:1958年、パリオペラ座の依頼による。

※後註2:これはバレエの美術・衣装に先駆けて制作されたリトグラフで、1949年、美術出版・編集者ウジェーヌ・テリアドから話を持ちかけられたのを機に制作されている。出版は1961年テリアドより限定250部が為された。

 因に、ラヴェルのバレエ〈ダフニスとクロエ〉の初演時(1912年)の美術・衣装は、シャガールの師であるレオン・バクストで、シャガールはこの頃助手を務めていた。

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