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2008年12月28日 (日)

☆『ラヴェルの墓』〜伝達可能な音楽への希求〜

「伝達可能な音楽」とはメシアンの語法で、それはカトリシズムにおける神学的言語の音楽化と言えるでしょう。
 大学時代にベートーヴェンのピアノソナタのアナリーゼで「音楽における表意性」とご講義されたのは間宮芳生先生でした。音楽が意味を伝達し得る。先生曰く、「ベートーヴェンの音楽 イコール イデオロギー」でした。

 私はカトリック信者でもベートーヴェンでもないし、音楽=イデオロギー と 頑なに思っているわけではありません(音楽の遊びの要素も大事という意味で)。しかし作曲家の仕事とは、生涯をかけて独自の言語体系を創り上げること、それに近いことなのではないかと思っています。まだまだ私はそれを成し遂げてはいません。しかし、それを目指してこれからも生きて行きたいと思います。
 それに、シャーマンが活躍していた先住民の時代から、音楽は演劇や舞踊と未分化なかたちで、意味を伝達し得ていたと思います。今、音楽を考えるときに、そのような根源的な意義を、音楽それ自体の中に蘇らせたい、と思っているのです。ただの懐古ではなく、現代にその意義を活き活きとしたかたちで蘇生させ、社会的なインパクトになるような「美」としたいのです。

 平和について考えます。
「平和」とは、「戦争のない世界」でなければ、それは自己中心的な偽善でしょう。
「自由と正義のために」武力で侵略し、殺戮 破壊を行うことが、決して平和に繋がり得ない。それはイラク戦争によって証明され、同盟国として加担してしまったこの国 日本によってもまた証明されることになるのではないでしょうか。

 国として殺戮に加担してしまったのであり、確実にイラクの民間の子供たちも親たちも「殺されてしまった」のであり、「取返しのつかないこと」を国は既にしてしまったのです。亡くなった人は還りません。

 一方国内では医療費が払えないお年寄りが病で亡くなられたり、自殺されたり(国内の自殺者数は年間3万人以上と言われています)、また、犯罪によっていのちを狙われたり、戦争に協力してしまったがために、「現代のワシントンの大首長」のように、ただ「同じ国だから」というだけで報復の対象とされたり、倒産やリストラで職を失う人が溢れ返りそうですし、やはり深刻な生存の危機に見舞われています。

 対外的な罪に加え、国内では国民が生存を脅かされるといった二重悪を犯している。結局、何一つとして良いことのない政治で、おかしいとは思いませんか? 

 未だにその政治責任も果たさず深い反省もないままの小泉政権(今もその延長に変わりない)も、その時に出された奇妙な裁判員制度も、決して許してはいけないと思うのです(アフガニスタンについても、それがたとえ給油だけだと言われていても)。これは別に偉くもなんともない極当たり前な極ふつうの人としての良心の問題だと思うのですが。

 権力の暴走と侵略への護符であった憲法をないがしろにしてしまった政治の罪は極めて重いと思います。

 しかし私がこのような意識に至ったのには、2003年の沼田鈴子さん、それに1997-98年の今は亡き鷲谷サトさんとの出会いが、強く影響しています。憲法の意義や大切さも、それまでは今ほどに解っていなかったでしょう。

 沼田鈴子さんについてのおすすめ本:「ヒロシマ 花一輪物語

 鷲谷サトさんについてのおすすめ本:「沖縄戦とアイヌ兵士

 関連既載記事:「三冊の本

 作曲進行中の『ラヴェルの墓』は、2006年7月に第一楽章“天国の鳥”が初演されました。もうすぐ完成する第二楽章“陽溜りの中で微笑む天使”が来年3月7日 ラヴェルの誕生日に初演が予定されています。

 標題付の多楽章の交響曲或いは交響詩の一楽章づつを発表しているような感覚ですが、編成はBouquet des Tonsのみなさんによるアルトフルート(第一楽章ではフルートでした) ヴァイオリン チェロ チェンバロによる四重奏です。

 曲は、上記の鷲谷サトさんのことが書かれている数少ない貴重な本「沖縄戦とアイヌ兵士」(橋本進氏編)をベースに、戦争と平和の過去 現在 未来を内的に把(とら)え、五つの楽章ごとに象徴される「意味」から、いのちの「祈り」へと至ること、「御水取り」の中心意義としての「悔過」に音楽で少しでも近づくことです。重いテーマですが、これこそ今、一音楽家が人としてやらなければならないテーマであると思います。aynu neno an aynu

 どうか完成をお守りください。

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